interview 医療法人社団 昭和育英会
プロローグ
prologue
医療法人社団 昭和育英会
医療法人社団 昭和育英会 様
http://showa-ikueikai.org/
業界:医療・教育
設立:昭和54年
理事長:山藤 賢

*森のリトリート導入時期
2016年 5月13〜15日 那須
2017年 11月 9〜11日 石垣島
2018年 6月 1〜3日 山中湖

臨床検査技師の国家試験合格率では全国屈指の名門と言われる昭和医療技術専門学校と、4つのクリニックを併せ持つ医療法人。理事長、学校長の山藤賢氏は、専門医としても外来、手術など臨床の場にも携わる。また、なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)のチームドクターなど、国内・国際大会のチームドクター業務や、社会人向けのリーダーシップ研修など学外での教育活動などにも力を注いでいる。

3回に及ぶ森のリトリートの体験を振り返り、今の職場にどんな変容が起こったのかをインタビューしました。
*理事長 山藤 賢様(文中 さんちゃん*注1)
*インタビュアー  山田博(当社代表取締役)

インタビュー本編
main part
察する力
山田:なぜ職員の皆さんを森につれていこうと思ったのですか?

山藤:そもそもは、僕が森で感じたことをみんなに感じてもらいたい、素晴らしい世界があるから、と思ったのが最初だと思います。さらに、職員と毎日毎日24時間しゃべらない、たぶん会社っていうのは、なにかのしくみやマニュアルで動いている。ぼくが思っていることと、人が思っていることをどこでどう擦り合わせたらいいんだろう。お互いが察していればいいけど、察していることができないから齟齬が起きている。経営者として一番やるべきことは、お互いが察しているものが合っても合ってなくてもお互いに共有できていれば、仕事って簡単な話ではないかっていう風に思うんです。

山田:察しあっていることが擦り合っていればいい。

山藤:察しられなくて、なにかで信頼できないとか、言葉じゃなかったり、数字だったり結果だったり評価だったり、「この数字では仕事してないだろう」と言ったりするのは、察することではないと思います。
期待したものではないものが生まれました
山藤:普段から会議で話してるし、よくわかっていると思っていた職員が、森のリトリートでは、僕の知らない話をし出すわけなんです。もはや僕の手の内にいないですね。普段、「これできてないよね」、「すみません」、というやりとりの中で、ここまでしかやらない人だ、言わない人だと思っていたら、全然違っていたんです。自己紹介から違っていました。まだ飲んでもいない、焚き火もかこんでいないのにおかしい(笑)、 すごい感性が出てくる。最初から、とっても面白いことが始まったと思いました。さらに、夜、焚き火で話を始めたら、みんな豊かな話を始めました。

かっさん(注1)のエピソード、年は44歳、人工透析の技師、年齢的に経験もあって役職者なんですが、人との関係がうまく築けなくて、職員がまとまらなかったり、信頼関係が築けなかったりするので、人をまとめるのが苦手と本人が言っていました。森に来るのは初めて。那須の森で竹林に魅せられて竹林に行ったんです。そこで、竹と自分の成長と重ね合わせたのだと思います。
そして組織は森になった
山田:最初に行った時と今はどんな変化を感じますか?

山藤:経営者として楽なのは、指示命令系統の増幅、ようするに価値の共有みたいなのがあったほうが楽だと思うんです。指示系統を増幅させたいから研修とかしたりするわけだと思います。

山田:やりますよね、ある種のコントロールですよね。

山藤:コントロールが強ければ強いほどいい会社だと思っているし、本にもそう書いてあるし、どういう仕組みをつくると経営者が楽になるかの本ばかり並んでいるわけじゃないですか、どれを選択するとそれができるのだろうって思うのを多分やっているんでしょうけど、森に行ったら何かが増幅されたんです。指示命令系統は増幅されていないので、関係性が横に広がった、ぐちゃぐちゃ、モザイクみたいに絡まりあっているのです。今はそんな感じになりました。

山田:それが生態系だと思うんですよね。下なく優劣なく、ただ絡まりあっている。そして生きている、そして持続している。そういう感じに近くなっているんじゃないですか?森はその生態系の象徴ですね。
目に見えない網の目のような信頼
山藤:何を求めていったかというと、察する力。やらされて動くとかマニュアルで動くのではない、察する力。信頼関係と愛があれば、ぼくがこの人たちは豊かで大丈夫で思った気持ちと、みんなが理事長や仲間と一緒なら大丈夫と思った関係性が、愛としてあるのであれば、任せてうまくいかなくても、それ知っていて任せた、と思えるんです。仕事がうまく行く行かないかはそういうことじゃないかと思います。そもそも売上を目標にしてはやっていないので、察する力、信頼関係と愛をよりどころでやっていくと、結果として、売上がいいんです。

山田:今の話を聞いていて、つながっている関係性を感じました。さんちゃんが予想外に感じたすばらしさ、愛おしさ、みんなが感じた目に見えない信頼、それが仕事のときに効いている。例えばもうちょっとよく考えよう、もうちょっと感じてみよう、もうちょっとやってみようというときに、それが出るんだと思うんですよね。それが結局結果にでる。誰にも目には見えないけれど、網の目のように通じ合っている。網の目の濃さ、見えないネットが、森に行ってより濃くなっている、張り巡らされている、そういう感じがしました。

山藤:確かに濃くなっているのでしょうね。
何かあったら私たちが守りますよ
山藤:職員に救われたということがありました。会社を揺るがすようなトラブルがあったときに、どうしようかなと思って、森に行った三人に相談しようと飲み誘って行ったら、最初から関係ない話で、店じまいまで他の話でもりあがってゲラゲラ笑って帰って(笑)。確かに話はすごく面白かったんですよ、でも、大事な話は全然できなかったけど、どうなんだろうって思っていたら、そのあと、メールをくれて、「先生はいつも私たちを守ってくれているので、何かあっても自分たちが守りますよ」って伝えてくれたんです。さらに「何があったか分からないし、先生は本当に困っているだろうけれど、何かあったら私たちが守りますよ、なんの力にもなれないけど、」って書いてあったんです。経営者冥利につきると思いました。

その思いがあるって、仕事の上司と部下でそういうことってなかなかない、それが関係性じゃないですか、網の目が濃くなっている、つながりの深みが増しているというのは、たぶんそういうことではないかと思うんです。例えて言えば、ぼくにとって、一緒に森にいった仲間たちは命の恩人みたいな存在になったのです。一生かけてこの人たちを幸せにして恩返しをしようと思うわけです。
森に入って、僕は弱くなった
山藤:森に入って、僕は弱くなったんですよね、強くもなっているんですけど。

山田:弱くなった?

山藤:社長は弱みを見せたほうがうまくいく、とよく言われますが、そういうレベルの話ではなく、良いも悪いもなく、僕自身を知られてしまったんです。みんなもみんな自身を知ってしまった、そうなると、「先生荷物片付けられないですよね」とか怒られたり(笑) 結局、指示命令系統のコントロールが強くなってものを言えなくなるのではなく、なんでも言えてしまいながら、仕事のときも同じで、ぐちゃぐちゃになったんですね。勝手に弱くなって、勝手に強くなって、勝手に弱くなって、みんながそうなるんです。

山田:ありのままの姿というか、飾らなくてよくなったというか、見えちゃってるしね、そのままいればいいよねっていう風になって、みんな楽なんじゃないですかね。良く見せようとしなくてよくて。そういう感じになってきてるんじゃないですか。
お互いを察する力が関係性を深め、結果にとらわれず一緒に仕事をやっていける 。そういう人たちと何かをする時には、自分で頑張らなくてよくなるから弱さを見せられるし、強さを尊重できるようになる、ということなのかも知れないですね。

注1)森のリトリートでは、本名ではなく、森ネームといわれる「呼ばれたい名前で呼び合います。